第99回『大倉精神文化研究所 異貌の建築』
日本のアイデンティティを汎世界観に求めたデザイン 建築家 長野宇平治 1932年(大正7年)竣工 Time & Tide 時代と背景から読み解く
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2014年02月23日(日)~2014年02月26日(水)開催
明治以降導入された洋式建築の本流として日本の古典主義建築は多数建築された。英人ジョサイア・コンドルは工部大学校に招聘されるが、その跡を継いだ辰野金吾は東京駅をはじめ多くの様式建築を実現する先駆者となった。辰野金吾の人脈の中で辰野金吾を超える建築家はこの長野宇平治と言える。
ギリシャ文明にその範のある古典主義建築はその様式美に特徴がある。建物全体を頂部、胴部、基壇に分割し、それぞれを構成するデザイン化された要素/ディテールが様式美を生みだす仕組みだ。いわば様式建築の文法である。
長野宇平治の設計の大倉山記念館は東西文明の一体化を望んだ施主の夢を具現化している。設計者である長野宇平治の東西の多様な様式を折衷しながらその融合を形として示し、それが雑駁感に陥ることなく、深い精神性を形として成したその力量を認めないわけにはいかない。
大倉山記念館は強固な意志を示す三角形や精神の活動を示す逆三角形をそれぞれのディテールに秘め全体が構成されている。満州事変の翌年に竣工したこの建築は長野宇平治の最終作となったが、戦争へ進んでいく時代とともにあった。
日本文化はその歴史の中で多くの多様性を内包し、融合しながらはぐくまれてきた歴史がある。東西文明の中での優劣性を示すのに文明の融合を誇ることは一つのテーマとなりえた。その時代が求める形を実現してきた長野宇平治は時の建築家であったといえる。時代背景からしても新しい日本のアイデンティティが求められた。
Time and Tide (ジョン・ラスキン)
館内案内:ボランティアガイド森紘一氏
水谷(みずのや)鉄也と大倉精神文化研究所の彫刻、ダコールと大倉邦彦との関わりは、当会代表藤嶋が解説します。
桑野 隆司
1949年大阪生まれ。地域美産会世話人、㈱日本設計メディカルコア代表取締役、㈱日本設計医療施設設計室統括部長。長年建築家として時代を代表する病院の設計監理を行うと同時に、研究会や海外研修ツアーを企画実施し、業界の横断的活動や後進育成に尽くす。現在は㈱日本設計メディカルコア最高責任者として、コンサルティング分野にも活動を広げ、病院施設更新に必要な経営診断、組織改善、基本構想策定を、従来の設計監理業務に加えて主宰しつつ、日本を代表する病院建築家の1人として国内外で活躍中。代表作品は川崎市立川崎病院、昭和大学病院中央棟、ボリビア国サンタクルス病院他多数。
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